
1948年に策定された医師法第20条では
「無診察治療等の禁止」と規定されており、
法的基板の上でオンライン診療のあり方は
これまで不明確でした。
しかし、コロナパンデミックをきっかけに
オンライン診療は社会に大きく浸透し、
現在では政府や日本医師会も
オンライン診療の恒久化に肯定的です。
より広域の集患が可能であり、
利便性も高いため、ここ数年の
オンライン診療の届け出医療機関数は
着実に増加傾向です。
一方でオンライン診療に関する
ルール変更やコストの負担、
さらに急速に進む医療DXへの
対応の負担などを考慮し、
導入に踏み切れないクリニックも少なくないでしょう。
そこで本記事では、
オンライン診療に関する保険点数の動向や、
保険診療のクリニックが
導入すべきかについて詳しく解説します。
オンライン診療とは
厚生労働省によると、オンライン診療とは
「スマートフォンやタブレット、パソコンなどを使って、自宅等にいながら医師の診察や薬の処方を受けることができる診療」
と説明されています。
参照元:厚生労働省「オンライン診療について」
1997年、僻地や離島に暮らす人々のため
遠隔診療が推進されましたが、
資金や人的資源の問題から事実上挫折していました。
しかし、医師の働き方改革や
医師偏在などの諸問題を解決すべく、
2018年に厚生労働省は
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を公表し、
世界に大きく遅れを取りながらも
再びオンライン診療の道が開かれました。
さらに、コロナパンデミックを経て、
現在は政府が推進する「医療DX」の
中核の1つとして、オンライン診療は
恒久的な医療インフラとして位置づけられています。
その後、2022年の改訂で
“初診からのオンライン診療”が
解禁されるなど、数度の見直しを経て、
現在はより柔軟で実用的な運用が可能になっています。
算定要件5つのポイント
令和6年度(2024年度)の診療報酬改定で、
オンライン診療は「特例」から
「日常的な医療」へと完全に移行しました。
以下に算定要件のポイント5つをまとめます。
- 保険医が保険医療機関内で実施することが原則(事後確認可能な場所なら院外も可)
- 厚生労働省の指針に沿った診療、および事前の届出と研修受講は引き続き必須
- 【重要】マイナンバーカードを用いたオンライン資格確認体制や、電子処方箋の発行体制など、「医療DX」に対応した環境整備が強く推奨される(「医療DX推進体制整備加算」等の対象となるため)
- 初診の場合、麻薬や向精神薬(睡眠薬・抗不安薬等)の処方は厳禁
- 対面診療を提供できる体制、または連携医療機関の確保が必要
以前はビデオ通話の環境があれば
オンライン診療の導入が可能でしたが、
現在は電子処方箋やオンライン決済など、
周辺システムとの連携が
導入の標準仕様となっています。
オンライン診療の保険点数
令和6年度の改定以降、オンライン診療の評価体系はより明確化されました。
- 初診料:251点(対面の場合288点)
- 再診料:73点(対面と同様)
- 医学管理料:これまで生活習慣病の管理に広く使われていた「特定疾患療養管理料」から、高血圧・脂質異常症・糖尿病の3疾患が除外されました。 これら3疾患の患者さんに対しては、新たに設けられた「生活習慣病管理料(II)(情報通信機器を用いた場合)」等を算定することになります。これには「療養計画書」の作成と患者同意(初回)が必要となり、点数も対面診療より低く設定されています。
オンライン診療を導入すべき開業医とは?
以上の動向を踏まえ、
どのようなクリニックであれば
オンライン診療を導入すべきでしょうか?
ポイントは「医療DXへの適応」と「慢性疾患管理の効率化」です。
内閣府等の報告によれば、
適切なルール下でのオンライン診療は
対面診療と遜色のない安全性が確認されています。
導入を積極的に検討すべきは、
以下の条件に当てはまるクリニックです。
- 「生活習慣病管理料(II)」の対象患者が多い(高血圧・脂質異常症など)
状態が安定している患者さんの通院負担を減らし、ドロップアウトを防ぐためにオンライン診療は極めて有効です。 - 医療DXへの投資に前向きである
マイナ保険証や電子処方箋システムを導入することで、加算による収益増が見込めます。 - 定期処方がメインの再診患者が多い
逆に、初診での向精神薬処方が多い心療内科や、処置・検査が必須の診療科では、制度上の制限によりメリットが出にくい場合があります。
現状、クリニック側には
システム導入コストや
医学管理料の減算といった
複数のハードルがありますが、
国は医療DXとセットで
オンライン診療を推進する姿勢を崩していません。
医療データの自動連携などが進めば、
今後、診療の効率は飛躍的に高まる可能性があります。
クリニックの先生におかれましては、
「単なるビデオ通話」ではなく
「データに基づく次世代の診療スタイル」
として、導入を検討される時期に来ているかもしれません。
医師 H.N.




